葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

朝日新聞は日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題の本質を直視せよ

(社説)日韓の歴史問題 不断の直視こそ必要だ:朝日新聞デジタル

www.asahi.com

日本と韓国の関係改善を喜びたい。だが、歴史問題という火種は消えていない。隣国関係が良好であり続けられるよう、双方がナショナリズムをあおることなく、丁寧に向き合う姿勢が必要だ。

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徴用工問題は今春、韓国側が賠償金相当額を肩代わりする解決策を示した。両国関係は改善基調に向かったが、一部の原告は反発し、支給金の受け取りを拒んでいる。韓国世論にも反対意見が根強い。

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慰安婦問題では15年の日韓合意を受けて、韓国が設立した財団に日本政府が10億円を拠出し、存命だった元慰安婦の7割超が支援金を受け取った。その後、合意を評価しない韓国の前政権により財団は解散させられたが、現政権は合意を尊重する立場だ。

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国民感情にかかわる歴史問題は、司法判断や政治的合意ですべてが解消するものではない。「終わった話」とはせず、過去を直視する不断の取り組みこそが大切だ。

 

(社説)日韓の歴史問題 不断の直視こそ必要だ:朝日新聞デジタル

「日韓の歴史問題」について「不断の直視こそ必要だ」と述べる朝日新聞の社説ですが、朝日新聞は日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題の本質を看過しています。

日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題は、日韓両国の外交問題ではなく、日帝の不法な朝鮮植民地支配体制下における日本軍や日本企業による人権侵害という人権問題です。これまで日本の保守政権と韓国の軍事政権あるいは保守政権は、米国主導の戦後東アジア秩序を支える新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」を維持するために*1日本軍性奴隷制被害者や日帝強制動員被害者の人権を犠牲にしてきました。そして、朝日新聞の社説が肯定的に評価する「15年の日韓合意」や「韓国側が賠償金相当額を肩代わりする解決策」は、まさに日韓両国の保守政権が韓国の民主化と「ろうそく革命」によって生じた日韓「1965年体制」の綻びを修復するという「日本と韓国の関係改善」のために日本軍性奴隷制被害者や日帝強制動員被害者の人権を犠牲にするものです*2。そのことを考えると、私は朝日新聞のように「日本と韓国の関係改善」を手放しで喜ぶことはできません*3。それに、朝日新聞が喜ぶ「日本と韓国の関係改善」は、先に述べたように米国主導の戦後東アジア秩序を支える新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」の綻びを修復するものであって、日韓の人民同士の友好親善とは似て非なるものですから、私は新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」の修復を喜ぶつもりもありません*4

どうやら朝日新聞は、「支援金」を受け取らなかった日本軍性奴隷制被害者と韓国の前政権が「日韓合意」を評価しないことや、韓国世論や「支給金」の受け取りを拒んでいる一部の日帝強制動員被害者が「韓国側が賠償金相当額を肩代わりする解決策」を評価しないことが、「ナショナリズムをあおる」ものであって、それが日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員「最終的かつ不可逆的な解決」を妨げ、ひいては「隣国関係が良好であり続け」ることの妨げになると言いたいようです。そんな朝日新聞は、大きな勘違いをしています。「100億くれても、1000億くれても、私たちは謝罪してもらう前にはそのお金は要らない」という日本軍性奴隷制被害者・金福童さんの言葉*5や「金が欲しいのではない。(被告企業でない企業が拠出する)大義名分のない金は受け取れない」という日帝強制動員被害者・梁錦徳さんの言葉*6からわかるように、日本軍性奴隷制被害者や日帝強制動員被害者は単にお金が欲しくて裁判を闘っているのではありません。日本軍性奴隷制被害者や日帝強制動員被害者が日本政府に対して求め続けているのは、日本政府の真摯な謝罪と責任ある賠償です。つまり、責任の所在をはぐらかした「償い金」や「癒し金」あるいは「支給金」では、日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題を根本的に解決することは決してできないのです。

先にも述べたように、日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題は、日帝による不法な朝鮮植民地支配体制下における日本軍や日本企業による人権侵害という人権問題であり、それは徹頭徹尾加害者である日本側の責任問題です。それゆえ、日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題を「最終的かつ不可逆的に解決」する最善かつ唯一の方法は、日本政府が日帝による朝鮮植民地支配の不法性を認め、そしてその下における日本軍や日本企業による人権侵害について法的責任を認めて、被害者に対して真摯に謝罪し責任ある賠償をすることです。「不断の直視こそ必要だ」と言う朝日新聞は、日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題が、日帝の不法な朝鮮植民地支配体制下における日本軍や日本企業による人権侵害という人権問題であり、それは徹頭徹尾加害者である日本側の責任問題であるという日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題の本質を直視すべきです。