葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」の先にあるのは、米国主導の世界経済体制を守るための戦争である。

日韓関係「良い」急上昇、日本45%・韓国43%…読売新聞と韓国日報が共同世論調査 : 読売新聞

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左派あるいはリベラル派の中にも、日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」を喜ばしいことだと思う人が少なからずいるようです。

しかし、日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」の先にあるものを考えると、私は日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」を手放しで喜ぶことができません。

岸田首相が「日韓、日米韓の戦略的連携がこれほど必要な時はなく、日韓関係の改善は待ったなしだ」と述べた*1ことや、バイデン米大統領が日韓関係の改善に関して「両首脳の勇気ある業績だ。日米韓の協力関係がより強固になった」と評価した*2ことなどからわかるように、日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」は、韓国の民主化と「ろうそく革命」によって生じた、米国主導の戦後東アジア秩序を支える新植民地主義*3的な日韓「1965年体制」*4の綻びを修復し*5、究極的には米国の覇権すなわち米国主導の世界経済体制を守るための米・日・韓三角軍事同盟を維持・発展させることにあります。つまり、日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」の先にあるのは、戦争法*6が制定されたことで(「平和憲法」があるにもかかわらず)日本も「集団的自衛権」に名の下に同盟国として参加できるようになった*7、米国主導の世界経済体制を守るための戦争なのです。そして、「1965年体制」としての日韓関係を修復するために犠牲を強いられるのが、日本軍性奴隷制日帝強制動員といった日帝による朝鮮植民地支配下における人権侵害の被害者の方々なのです*8

このように、日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」は、米・日・韓の権力層や経済的支配層の利益のために行われるものであって、日韓の人民同士の友好親善を主眼とするものではありません。もっとも、そのような「日韓関係改善」であっても、平和や人権をなおざりにした「日韓友好親善」ムード作りには役立つかもしれません。しかし、そのような平和や人権をなおざりにした「日韓友好」が、はたして日本と韓国の人民同士の真の友好関係であるといえるでしょうか。日本と韓国の人民同士の真の友好関係は、日韓両国の保守政権による「日韓関係改善」の先にあるのではなく、平和や人権をなおざりにする「継続する植民地主義」の体制である日韓「1965年体制」*9を克服した先にあるのです。

*1:日韓、日米韓の戦略的連携がこれほど必要な時ない=岸田首相 | ロイター

*2:バイデン氏、日韓首脳の訪米を招請 3カ国の首脳会合で | 毎日新聞

*3:新植民地主義(しんしょくみんちしゅぎ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

*4:“「六五年体制」とは、日本(佐藤栄作政権)と韓国(朴正煕政権)が調印した韓日基本条約や四つの協定にもとづいた、現在の韓日関係の出発点となる体制を指す。第一には米国を頂点とする垂直的系列化を基盤とする韓米日擬似三角同盟体制(日米同盟と韓米同盟)である。[……]第二にはこの同盟体制を維持し、その安定性を高めるため歴史問題の噴出を物理的暴力で抑圧するか、コントロール可能な領域におく。”(権赫泰『平和なき「平和主義」』)

*5:米国主導の戦後東アジア秩序を支える新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」は、その維持のために韓国の強圧的な政権を必要としますが、しかし、1987年の韓国の民主化は、強圧的な政権を倒して日韓「1965年体制」に綻びを生じさせました。そして、その綻びは李明博朴槿恵政権という保守政権によって修復されたものの、文在寅政権を生み出した2016~17年の「ろうそく革命」は、再び日韓「1965年体制」に綻びを生じさせました。つまり、日本の岸田政権と韓国の尹錫悦政権による「日韓関係の改善」とは、「ろうそく革命」によって生じた日韓「1965年体制」の綻びを修復することなのです。

*6:戦争法案 強行採決

*7:「集団的自衛権」が実行可能段階に 安保法成立7年 米軍と初の実動訓練、識者は「権力の暴走」を懸念:東京新聞 TOKYO Web

*8:被害者の尊厳を蔑ろにして加害者を免責する「解決策」では、日帝強制動員問題は決して解決しない。 - 車家ブログ Kurumaya Blog

*9:[寄稿]植民地支配の被害者の人権踏みにじる「1965年体制」を民主化しよう : 社説・コラム : hankyoreh japan