葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

日韓両国の保守政権は、むしろ「日韓の関係」を後戻りさせている。

国交正常化以降で最悪といわれた日韓関係は、尹政権が3月に徴用工問題の「解決策」を示して改善に転じた。首脳同士のシャトル外交の12年ぶりの復活、金融危機時に支え合う通貨スワップの8年ぶりの再開合意など、安保を含む幅広い分野で関係の正常化や復元が進む。

歓迎すべき動きだが、一方でなぜそこまで関係が悪化したのか、双方が率直に振り返り、後戻りさせないための教訓をくみ取っていくことが大切だ。

 

(社説)日本と韓国 後戻りさせない努力を:朝日新聞デジタル

日韓両国は「日韓の関係改善」への歩みを後戻りさせない努力をすべき旨を主張する朝日新聞の社説ですが、私が思うに、日韓両国の保守政権は、むしろ「日韓の関係」を後戻りさせています。すなわちそれは、新植民地主義*1的な関係である日韓「1965年体制」*2への後戻りです。

米国主導の戦後東アジア秩序を支える新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」は、その維持のために韓国の強圧的な政権を必要としますが、しかし、1987年の韓国の民主化は、強圧的な政権を倒して新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」に綻びを生じさせました。そして、その綻びは李明博朴槿恵政権という保守政権によって修復されたものの、文在寅政権を生み出した2016~17年の「ろうそく革命」は、再び日韓「1965年体制」に綻びを生じさせました。つまり、日本の岸田政権と韓国の尹錫悦政権という日韓両国の保守政権による「日韓の関係改善」とは、「ろうそく革命」によって生じた日韓「1965年体制」の綻びを修復することであり、それは「継続する植民地主義」の体制である日韓「1965年体制」の克服を志向する動きに対する反動なのです。そうした意味で、日韓両国の保守政権は「日韓の関係」を後戻りさせていると言えます。

朝日新聞の社説は日韓両国の保守政権による「日韓関係の改善」を「歓迎すべき動き」だと言いますが、新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」の綻びを修復するものであるという日韓両国の保守政権による「日韓の関係改善」の正体と、このような「日韓の関係改善」の先にあるものを考えると、私は日韓両国の保守政権による「日韓の関係改善」を手放しで歓迎することはできません。

新植民地主義的な関係である日韓「1965年体制」を維持し、その安定性を高めるためには、その妨げとなる日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題といった歴史問題の噴出を抑えるか、あるいは沈静化させる必要があります。そのため、日韓両国の保守政権は、日本の国家責任を棚上げした「見舞金」で日本の政府や被告企業に謝罪を求める被害者の口を封じようとするのです*3。つまり、日韓「1965年体制」は、日本軍性奴隷制日帝強制動員といった日帝植民地支配下における人権侵害の被害者を抑圧することで維持されるものなのです*4

このような日韓「1965年体制」は、岸田首相が「日韓、日米韓の戦略的連携がこれほど必要な時はなく、日韓関係の改善は待ったなしだ」と述べた*5ことや、バイデン米大統領が日韓の関係改善に関して「両首脳の勇気ある業績だ。日米韓の協力関係がより強固になった」と評価した*6となどからわかるように、究極的には米国の覇権すなわち米国主導の世界経済体制を守るための米・日・韓三角軍事同盟を維持・発展させることにあります。つまり、日韓両国の保守政権による「日韓の関係改善」は、米・日・韓の権力層や経済的支配層の利益のために行われるものであって(それゆえ朝日新聞のような「ブルジョア新聞」は、日韓両国の保守政権による「日韓関係の改善」を「歓迎すべき動き」だと言うのでしょう。)、その先にあるのは、戦争法*7が制定されたことで(「平和憲法」があるにもかかわらず)日本も「集団的自衛権」に名の下に同盟国として参加できるようになった*8、米国主導の世界経済体制を守るための戦争なのです。

朝日新聞に限らず日本のマスメディアの多くや国民の多くが、このような日韓両国の保守政権による日韓「1965年体制」の修復を「日韓の関係改善」と呼んで歓迎しますが、日帝植民地支配下における人権侵害の被害者を抑圧することで維持される日韓「1965年体制」の修復が、果たして本当に歓迎すべき「日韓の関係改善」なのでしょうか。

今月上旬、江戸時代の「朝鮮通信使」が乗った船の復元船が初めて、韓国から対馬に来航した。豊臣秀吉朝鮮出兵で断絶した国交の回復に朝鮮王朝が派遣した外交使節団で、200年余りにわたり日本と朝鮮との友好をつかさどった。

「嵐」の後の交流が、長い友好を築いた先人の知恵に学びたい。「改善の機運を新たな日韓関係の幕開けに」。関係者の願いに、政治は応えるべきだ。

 

(社説)日本と韓国 後戻りさせない努力を:朝日新聞デジタル

先に述べたように、日韓両国の保守政権による「日韓の関係改善」は、米・日・韓の権力層や経済的支配層の利益のために行われるものであって、日韓の人民同士の友好親善を主眼とするものではありません。もっとも、そのような「日韓の関係改善」であっても、平和や人権をなおざりにした「日韓友好親善」ムード作りには役立つかもしれません。しかし、そのような平和や人権をなおざりにした「日韓友好」が、はたして日本と韓国の人民同士の真の友好関係であるといえるでしょうか。日本と韓国の人民同士の真の友好関係は、日韓両国の保守政権による「日韓の関係改善」の先にあるのではなく、平和や人権をなおざりにする「継続する植民地主義」の体制である日韓「1965年体制」を克服した先にあるのです。

*1:新植民地主義(しんしょくみんちしゅぎ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

*2:“「六五年体制」とは、日本(佐藤栄作政権)と韓国(朴正煕政権)が調印した韓日基本条約や四つの協定にもとづいた、現在の韓日関係の出発点となる体制を指す。第一には米国を頂点とする垂直的系列化を基盤とする韓米日擬似三角同盟体制(日米同盟と韓米同盟)である。[……]第二にはこの同盟体制を維持し、その安定性を高めるため歴史問題の噴出を物理的暴力で抑圧するか、コントロール可能な領域におく。”(権赫泰『平和なき「平和主義」』 | 法政大学出版局

*3:金福童ハルモニ「1億くれるって? 謝罪がなければ1000億でも無意味」-日本軍「慰安婦」問題解決全国行動

徴用被害者「物乞いするような金は受け取らない」 韓国政府解決策に反発 | 聯合ニュース

*4:[寄稿]植民地支配の被害者の人権踏みにじる「1965年体制」を民主化しよう : 社説・コラム : hankyoreh japan

*5:日韓、日米韓の戦略的連携がこれほど必要な時ない=岸田首相 | ロイター

*6:バイデン氏、日韓首脳の訪米を招請 3カ国の首脳会合で | 毎日新聞

*7:戦争法案 強行採決

*8:「集団的自衛権」が実行可能段階に 安保法成立7年 米軍と初の実動訓練、識者は「権力の暴走」を懸念:東京新聞 TOKYO Web