葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」と日韓の人民同士の友好親善は、似て非なるものである。

尹大統領・岸田首相、「関係改善」に同意…韓米日軍事協力へとつながるのか : 政治•社会 : hankyoreh japan

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日韓の人民同士の友好親善を希求する日本人の中には、日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」によって日韓の人民同士の友好親善が促進されることを期待する人も少なからずいることでしょう。たしかに、日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」は、日韓両国の国民の間に「友好親善ムード」を生み出すかもしれません。しかし、そうした「友好親善ムード」は、あくまでもうわべだけのものです。

日本人の多くは、日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」を「日韓の人民同士の友好親善」と同義であると思っているかもしれません。しかし、日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」と日韓の人民同士の友好親善は、似て非なるものです。

日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」とは、日本の岸田首相*1や林外相*2が「1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき日韓関係を発展させていく必要があ」ると述べていることからもわかるように、新植民地主義的な戦後「日韓関係」を基礎づける「六五年体制」*3の綻びを修復することです。新植民地主義的な戦後「日韓関係」を基礎づける「六五年体制」は、その維持のために韓国の強圧的な政権を必要としますが、しかし、1987年の韓国の民主化は、強圧的な政権を倒して「六五年体制」に綻びを生じさせました。その綻びは、2008年~17年の李明博朴槿恵政権という保守政権の手によって修復されたものの、文在寅政権を生み出した2016~17年の「ろうそく革命」は、「六五年体制」に綻びを生じさせました。それゆえ、「ろうそく革命」によって生じた「六五年体制」の綻びの修復を図るべく、日韓両国の保守政権は「日韓関係の改善」を志向するのです。

新植民地主義的な戦後「日韓関係」を基礎づける「六五年体制」は、岸田首相が「日韓、日米韓の戦略的連携がこれほど必要な時はなく、日韓関係の改善は待ったなしだ」と述べている*4ことからもわかるように、米国主導の世界経済体制を構築・発展させることを究極の目的とする米・日・韓三角(軍事)同盟を支えるためのものです。つまり、日韓両国の保守政権が志向する「日韓関係の改善」は、米・日・韓の権力層や経済的支配層の利益のために行われるものであって、日韓の人民同士の友好親善のために行われるものではないのです。

「六五年体制」を維持し、その安定性を高めるためには、日本軍性奴隷制問題(日本軍「慰安婦」問題)や日帝強制動員問題(徴用工問題)といった歴史問題の噴出を物理的暴力で抑圧するか、コントロール可能な領域におく必要があります。すなわち、「六五年体制」は、日本軍性奴隷制日帝強制動員の被害者の犠牲の上に成り立つものなのです。かかる「六五年体制」を修復するための「日韓関係の改善」が、はたして日韓の人民同士の友好親善に資するものであるといえるでしょうか。日本軍性奴隷制日帝強制動員の被害者の犠牲の上に成り立つような「日韓友好」は、決して真の友好関係ではありません*5。先に述べたように、「六五年体制」は、米国主導の世界経済体制を構築・発展させることを究極の目的とする米・日・韓三角(軍事)同盟を支えるためのものです。そうした「六五年体制」を維持・発展させるために日本軍性奴隷制日帝強制動員の被害者の人権を犠牲にすることは、まさしく「日本帝国主義の論理」です。日本と韓国の真の友好親善は、そうした「日本帝国主義の論理」で貫かれた「継続する植民地主義」の体制である「六五年体制」を克服した先にあるはずです。

*1:韓国次期政権の韓日政策協議代表団による岸田総理大臣表敬|外務省

*2:林外務大臣臨時会見記録|外務省

*3:“「六五年体制」とは、日本(佐藤栄作政権)と韓国(朴正煕政権)が調印した韓日基本条約や四つの協定にもとづいた、現在の韓日関係の出発点となる体制を指す。第一には米国を頂点とする垂直的系列化を基盤とする韓米日擬似三角同盟体制(日米同盟と韓米同盟)である。[……]第二にはこの同盟体制を維持し、その安定性を高めるため歴史問題の噴出を物理的暴力で抑圧するか、コントロール可能な領域におく。”(権赫泰『平和なき「平和主義」』)

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*4:岸田首相、日韓の関係改善急務 懸案解決へ行動求める―尹氏代表団と会談:時事ドットコム

*5:

yukito-ashibe.hatenablog.com