葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

「成熟した日米関係」を考える上で避けて通れない問題

(日曜に想う)「成熟した日米関係」を考える 編集委員・佐藤武嗣:朝日新聞デジタル

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「米国の押しつけだ」と憲法改正を唱える保守を自任する政治家や論客が、敗戦国で最も「非対等」な日米地位協定の改定をなぜ口にしないのか。

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政府・自民党の外交は、いかに米国に「使い勝手のよい」日本になるかに腐心してやいないか。対立と協力が複雑に絡む国際情勢で日本の国益を見定め、米国を「どう使うか」という議論がなぜ聞こえてこないのか。

 

(日曜に想う)「成熟した日米関係」を考える 編集委員・佐藤武嗣:朝日新聞デジタル

戦後日本の「対米従属関係」を甘受する保守派や自民党政権への不満を漏らす「リベラル紙」の朝日新聞にとって、「成熟した日米関係」とは「対米従属関係」を脱却した「対等な日米関係」なのでしょう。

たしかに、戦後日本の「対米従属関係」は「主権国家」同士の本来あるべき関係ではないでしょう。ただ、「対米従属関係」といっても、それは朝日新聞をはじめ多くのリベラル派が考えているような米国が日本を一方的に利用するものではありません。

「米国の押しつけだ」と憲法改正を唱える保守を自任する政治家や論客が、敗戦国で最も「非対等」な日米地位協定の改定をなぜ口にしないのか。それは、本来戦犯として裁かれるべき昭和天皇ヒロヒトが己の保身のために天皇制国家体制を米軍に守ってもらうことを望んだ*1という、保守を自任する政治家や論客にとって「不都合な真実」が存在するからです。保守派のみならずリベラル派も触れたがりませんが、敗戦後「国体護持」(=天皇制国家体制の維持)に腐心する昭和天皇ヒロヒトは、米国を主体とするGHQ連合国軍総司令部)による対日占領政策の実現に積極的に協力し*2、戦後日本が米国主導の東アジア国際秩序に組み込まれることによって「国体護持」という悲願を達成しました。つまり、戦後日本の「対米従属関係」は、昭和天皇ヒロヒトが己の保身と「国体護持」のために米国を利用した結果の産物なのです。朝日新聞は「政府・自民党の外交は、いかに米国に『使い勝手のよい』日本になるかに腐心していやしないか。対立と協力が複雑に絡む国際情勢で日本の国益を見定め、米国を『どう使うか』という議論がなぜ聞こえてこないのか」と不満を漏らしますが、日本が戦後も天皇制国家体制とアジア・太平洋地域における影響力を維持するためにアメリカ帝国主義をしたたかに利用しているからこそ、その代償として「米国に『使い勝手のよい』日本になる」ことが求められるのです。

こうしてみると、昭和天皇ヒロヒトの戦争責任と天皇制の存廃が「成熟した日米関係」を考える上で避けて通れない問題であることがわかります。つまり、「対米従属関係」を脱却した「対等な日米関係」を構築するために必要なのは、朝日新聞が言うような「対立と協力が複雑に絡む国際情勢で日本の国益を見定め、米国を『どう使うか』という議論」云々ではなく、何よりもまず戦後日本の米国に対する「負債」を清算すること、すなわち日本が自らの手で昭和天皇ヒロヒトの戦争責任を追及して天皇制を廃止することなのです。

*1:“ここで天皇は痺れを切らしたかのように、「日本の安全保障を図る為にはアングロサクソンの代表者である米国がそのイニシアティブをとることを要するのでありまして、その為元帥の御支援を期待しております」と”本筋“に切り込んだ。”(豊下楢彦昭和天皇マッカーサー会見』岩波現代文庫  98頁)

*2:「象徴天皇制」のどす黒い正体 ヒロヒトは自分の延命と天皇制存続のためマッカーサーに工作 革命と共産主義への恐怖が根底にあった - 週刊『前進』