葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

日本はもはや世界屈指の軍事大国である。

世界の軍事費約378兆円、過去最高に ウクライナは前年比51%増:朝日新聞デジタル

www.asahi.com

日本は11%増の502億ドルで前年の9位から10位となった。

 

世界の軍事費約378兆円、過去最高に ウクライナは前年比51%増:朝日新聞デジタル

日本は、戦後一貫して平和国家としての道を歩み、アジア太平洋地域や国際社会の平和と安定を実現してきています。日本の安全保障政策は、この歩みの延長上にあります。

 

日本の平和国家としての歩み|外務省

「平和国家」を自称する日本ですが、軍事費ランキング世界第10位の国がはたして本当に「平和国家」だと言えるのでしょうか。軍事費ランキング世界第10位の日本は、どう考えても「平和国家」ではなく世界屈指の軍事大国です。

膨大な軍事費を正当化する人たちは「中国の脅威から我が国を守るためには、『防衛力』の抜本的強化と『防衛費』の増額が必要なのだ」と言うでしょうが、それは詭弁です。昨今の日本の軍事力強化とそれに伴う軍事費の増額は実のところ、2015年に戦争法が強行制定された*1ことによって「集団的自衛権」の名の下に世界最強の軍事力を誇る唯一の軍事超大国である米国の侵略戦争に同盟国として参加できるようになった*2日本が、米国主導の東アジア国際秩序すなわち米国の東アジアにおける覇権を守るための戦争を米国と共に遂行するために必要なものです。つまり、自衛のための必要最小限度の実力を保持する*3ためではなく、米国主導の東アジア国際秩序すなわち米国の東アジアにおける覇権を守るための戦争を米国と共に遂行するのに必要な戦力を保持するためだからこそ、世界第10位の膨大な軍事費を必要とするのです。

左派やリベラル派の中には、「世界に誇る平和国家としての道を歩んできた日本が、安倍政権以降軍事大国へと急激に変貌してしまった」と思っている人も多いでしょう。たしかに、戦争法の制定が強行され日本が米国の侵略戦争に参加できるようになったのは安倍政権の時です。しかし、日本は安倍政権以降「平和国家」から軍事大国へと急激に変貌したのでは決してありません。戦後日本は、米国主導の東アジア国際秩序に組み込まれることを通じて「国体」を護持する(天皇制国家体制を維持する)道を選び*4、日本が犯した侵略戦争への深い反省に基づく「平和憲法」があるにもかかわらず「安全保障」に名を借りた軍事同盟を結んで米国主導の東アジア国際秩序すなわち米国の東アジアにおける覇権を守るための米国の侵略戦争に加担して暴利をむさぼってきました。そうして世界屈指の「経済大国」となった日本は1980年代の後半から今日まで、米国の東アジアにおける覇権を守るために日本に対してさらなる協力を求める米国の期待に応えるべく、「防衛力の強化」に名を借りた軍事力の増強を続けてきました。つまり、今日の日本の軍事大国化は、戦後日本の「平和憲法」をないがしろにした戦争加担と軍事力増強の歩みの延長上にあるのです。それを考えると、今日の日本の軍事大国化については、岸田政権が継承する「安倍政治」を問うだけでは足りず、「戦後日本の平和主義」そのものを問い直す必要があります。

左派やリベラル派の多くは「安倍政権に汚される前の戦後日本は、他国から尊敬される平和国家であった」と思っているでしょう。しかし、先述したように戦後日本が「平和憲法」をないがしろにして米国の侵略戦争に加担し、戦争の血で汚れたカネで軍事力の増強を続けてきたことを考えると、戦後日本が「他国から尊敬される平和国家であった」というのは残念ながら幻想です。戦後日本の左派やリベラル派にとって「戦後日本は他国から尊敬される平和国家であった」というのは自尊心の拠り所なのかもしれませんが、だからといって「戦後日本は他国から尊敬される平和国家であった」という幻想に縋っていては、いつまでたってもわれわれ人民の手で日本軍国主義を解体して日本を真の平和国家にすることはできないでしょう。つまり、日本軍国主義を解体して日本を真の平和国家にするためには、まず「戦後日本は他国から尊敬される平和国家であった」という幻想を捨て、日本軍国主義が「平和国家」を隠れ蓑にして今も生きながらえているという現実を正しく認識しなければならないのです。言うまでもなく、それは決して日本国憲法の平和主義の理念を捨てることではありません。「戦後日本は他国から尊敬される平和国家であった」という幻想を捨てて日本軍国主義が「平和国家」を隠れ蓑にして今も生きながらえているという現実を正しく認識することは、今日の日本が「平和国家」ではなく世界屈指の軍事大国であるという現状を追認することでは決してなく、そのような現状を変えて日本国憲法の平和主義の理念を真に実現するためのものなのです。

*1:戦争法案 強行採決

*2:「集団的自衛権」が実行可能段階に 安保法成立7年 米軍と初の実動訓練、識者は「権力の暴走」を懸念:東京新聞 TOKYO Web

*3:防衛省・自衛隊:憲法と自衛権

*4:敗戦後、「国体護持」(=天皇制国家体制の維持)に腐心する昭和天皇ヒロヒトは、米国を主体とするGHQ連合国軍総司令部)による対日占領政策の実現に積極的に協力し、戦後日本が米国主導の東アジア国際秩序に組み込まれることによって「国体護持」という悲願を達成しました。「安全保障」に名を借りた日米軍事同盟も、昭和天皇ヒロヒトが己の保身のために天皇制国家体制を米軍に守ってもらうことを望んだ結果の産物なのです。