葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

日本政府は、日本政府に日本軍性奴隷制被害者らへの賠償を命じたソウル高等法院判決を受容せよ。

日本軍「慰安婦」損害賠償請求訴訟で勝訴、今度は日本政府に直に問う : 政治•社会 : hankyoreh japan

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「一審判決を取り消す。原告に請求金額の全額と遅延損害金を支払うよう命ずる」

23日午後2時、ソウル中央地裁308号室。裁判官が勝訴判決を読み上げると、「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさん(95)は車椅子からがばっと立ち上がった。両手を合わせて裁判長に向かってしきりに頭を下げ、涙を流した。

 

日本軍「慰安婦」損害賠償請求訴訟で勝訴、今度は日本政府に直に問う : 政治•社会 : hankyoreh japan

元慰安婦ら逆転勝訴、日本政府に賠償命令 韓国高裁が主権免除認めず:朝日新聞デジタル

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上川陽子外相は「国際法及び日韓両国間の合意に明らかに反するもので極めて遺憾」とする談話を発表。外務省の岡野正敬事務次官は尹徳敏(ユンドンミン)・駐日韓国大使を呼び出して抗議した。韓国政府に国際法違反を是正するために適切な措置を講じるよう求めたとしている。

日本政府は賠償の問題は1965年の「日韓請求権協定」で解決済みとの立場を取る。主権免除を理由に裁判に参加してこなかった。上告せず、判決が確定する見通し。

首相官邸の幹部は、慰安婦の問題は「最終的かつ不可逆的に解決」するという2015年の日韓合意で決着しているとの見方を示したうえで、「日本政府としてすぐに対応することはない」と話した。

 

元慰安婦ら逆転勝訴、日本政府に賠償命令 韓国高裁が主権免除認めず:朝日新聞デジタル

日本政府が日本軍性奴隷制について加害責任を負うことに鑑みれば、今般の判決に対する日本政府の態度は盗人猛々しいと言わざるを得ません。

日本政府は、ソウル高等法院が国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の「主権免除」の原則を認めなかった点を「国際法違反だ」と言いたいのでしょう。しかし、「主権免除」の原則は絶対的なものではなく、主権行為には主権免除が適用されるが私法的行為には適用されないとする制限免除主義が現在の国際的な潮流であり*1、韓国の裁判所はもちろん(大法院1998年12月17日判決)、日本の裁判所もこれを採用しています(最高裁判所平成18年7月21日第二小法廷判決)。また、日本軍性奴隷制による人権侵害行為が私法的行為ではなく主権的行為であるとしても、日本軍性奴隷制による人権侵害行為のような国際法上の強行規範に違反する重大な人権侵害行為が国家によって行われた場合、それが主権的行為に該当するか否かに関係なく、国家の裁判権免除は否定されるとする有力な見解があります*2。つまり、ソウル高等法院が国際法上の「主権免除」の原則を認めなかったことが「国際法違反だ」とは決して断言できないのです。国際法上の主権免除の原則が、主権国家を尊重しみだりに他国の裁判権服従しないようにする意味を有するものであり、国際法上の強行規範に違反し他国の個人に大きな損害を与えた国家が主権免除の法理の背後に隠れ、賠償と補償を回避できる機会を与えるために形成されたものではない点に鑑みれば、ソウル高等法院が国際法上の「主権免除」の原則を認めなかったことはむしろ国際法に適うものといえます。

日本政府は「個人の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みであ」る*3という立場をとっています。しかし、国際法上も受け入れられている国家と個人が別個の法的主体であるという近代法の原理に鑑みれば、国家が個人の請求権を勝手に放棄することはできないはずです。それゆえ、「日韓請求権協定」という国家間の合意によって日本軍性奴隷制被害者の個人の請求権を消滅させることはできないと解するのが妥当です。つまり、今般の判決は日本政府の立場には反するかもしれませんが、「日韓請求権協定」に明らかに反するとはいえないのです。また、「日韓請求権協定」が個人の請求権を消滅させたものではないことは他ならぬ日本政府も認めるところであり*4、それにもかかわらず日本政府が「個人の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みであ」ると強弁することは、明らかな自己矛盾です。

首相官邸の幹部は、日本軍性奴隷制問題は「最終的かつ不可逆的に解決」するという2015年の日韓合意で決着していると言いますが、欺瞞的な「『慰安婦』問題日韓合意」*5の後も日本軍性奴隷制被害者らが日本政府に対して真摯な謝罪と責任ある賠償を求め続けていることは、日本軍性奴隷制問題が欺瞞的な「『慰安婦』問題日韓合意」で決着していないことのことの何よりの証左です。責任の所在をはぐらかした「償い金」や「癒し金」では、日本軍性奴隷制問題を根本的に解決することは決してできません。日本軍性奴隷制問題が欺瞞的な「『慰安婦』問題日韓合意」で決着したと勘違いしている日本の政府と国民は、故・金福童さんの「1億くれるって? 謝罪がなければ1000億でも無意味」*6という言葉を真摯に受け止めなければなりません。

日本軍性奴隷制問題を「最終的かつ不可逆的に解決」する最善かつ唯一の方法は、日本政府が日本軍性奴隷制による人権侵害行為について法的責任を認め、日本軍性奴隷制被害者に対して真摯に謝罪し責任ある賠償をすることです。日本政府が本当に日本軍性奴隷制問題を「最終的かつ不可逆的に解決」することを望むのであれば、日本政府は今般のソウル高等法院判決を受容し、判決を誠実に履行すべきです。