葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

はたして本当に「自衛隊」の使命は「国民を守る」ことなのだろうか。

(社説)自衛隊70年 積み上げた信頼こそ礎:朝日新聞デジタル

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自衛隊が1日で発足から70年を迎えた。平和憲法の下の実力組織として、国の防衛はもとより、災害派遣などの活動を通じ、今日では国民の幅広い支持を得るに至った。

一方、東アジアの安全保障環境の変化を受け、自衛隊のあり方を根本から変えるような政策変更が進む。先の戦争への反省の風化をうかがわせる事象も相次ぐ。地道に積み上げた信頼という礎を損なうことなく、「国民を守る」使命を果たしてもらいたい。

 

(社説)自衛隊70年 積み上げた信頼こそ礎:朝日新聞デジタル

おそらく日本国民の多くは、朝日新聞の社説が言うように「自衛隊」の使命は「国民を守る」ことだと信じて疑わないでしょう。しかし、はたして本当に「自衛隊」の使命は「国民を守る」ことなのでしょうか。

自衛隊」の前身である警察予備隊は、アメリカの冷戦政策上の必要性から米国主導の東アジア国際秩序に組み込まれた戦後日本の再軍備の第一歩として創設されたものであり*1、こうした経緯に鑑みれば、「自衛隊」の第一次的な役割は米国主導の東アジア国際秩序すなわち東アジアにおける米国の覇権を守ることだといえます。また、戦後の日本が米国主導の東アジア国際秩序に組み込まれたのは、日本が米国に敗れたからだけではなく、昭和天皇裕仁と支配層が固執した「国体護持」(=天皇制国家体制の維持)*2を戦後の日本が米国主導の東アジア国際秩序に組み込まれることによって達成したからです。このことと先に述べた「自衛隊」の第一次的な役割をあわせて考えると、「自衛隊」の究極目的は米国主導の東アジア国際秩序を守ることを通じて天皇制国家体制を守ることであるといえます。

朝日新聞の社説は、「自衛隊」を「平和憲法の下の実力組織」だと言います。しかし、日本がいまや世界屈指の軍事強国となっており*3、建前として軍隊ではないはずだった「自衛隊」が対中国戦争に向けて米国とその同盟国の軍隊と共同軍事訓練を行っている*4ことに鑑みれば、「自衛隊」は「平和憲法」が許容する「自衛のための必要最小限度の実力組織」ではなく、「平和憲法」が許容しないれっきとした軍隊であると言わざるを得ません。

つまり、日本軍「自衛隊」は、米国主導の東アジア国際秩序を守ることを通じて天皇制国家体制を守ることを使命とする軍隊であり、究極的に天皇制国家体制を守ることを使命とする軍隊である点で旧日本軍と本質的に変わりません。それゆえ、旧日本軍と同じく「天皇の国」のために殺し殺されるための軍隊である日本軍「自衛隊」に関して先の戦争への反省の風化をうかがわせる事象*5が相次ぐのも、ある意味で当然なのです。

このように、日本軍「自衛隊」の本当の使命は、米国主導の東アジア国際秩序を守ることを通じて天皇制国家体制を守ることですから、もし米国主導の東アジア国際秩序を守ることを通じて天皇制国家体制を守るうえで妨げとなる「国民」がいるとすれば、日本軍「自衛隊」も旧日本軍と同じようにそのような「国民」を「非国民」とみなして躊躇なく殺すでしょう。仮に日本軍「自衛隊」の使命が「国民を守る」ことだとしても、「国民を守る」ために国民ではない人民を殺すことは、日本国憲法が前文に謳う普遍的な権利である平和的生存権の趣旨にもとり許されません。

旧日本軍と本質的に同じであって「天皇の国」のために殺し殺されることを究極目的とするれっきとした軍隊である日本軍「自衛隊」は、天皇制国家が犯した侵略戦争への深い反省に基づく「平和憲法」とは敵対的に矛盾するものです。ところが、そのような日本軍「自衛隊」に関して日本共産党は、「一足飛びに自衛隊をなくすことはできない」から「自衛隊とかなりの期間、共存することになる」*6という理由で、日本共産党としてはいっかんして「自衛隊違憲」論の立場をつらぬくものの、自民党政権の打倒後に樹立される民主的政権に日本共産党が参加する際には「理の必然」として、「自衛隊=合憲」の立場をとると言います*7。たしかに、「一足飛びに自衛隊をなくすことはできない」のはその通りです。しかし、そもそも「自衛隊」が違憲であるならば、「自衛隊」の存在の根拠となる法令が無効となり、「自衛隊」は存在することが許されなくなるはずです。すなわち、「自衛隊」が違憲であるならば、「自衛隊」は解体されなければならないのが「理の必然」です。つまり、これまで述べてきたように旧日本軍と同じく「天皇の国」のために殺し殺されるためのれっきとした軍隊である日本軍「自衛隊」は、もはや「平和憲法」が許容する「自衛のための必要最小限度の実力組織」とはいえない違憲の軍隊であり、たとえ御用メディアが垂れ流すプロパガンダに毒された「国民」の幅広い支持を得るに至ろうが、理の必然として解体されなければならないのです。