葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

大災害時に繰り返される民族差別煽動デマ――大災害時のジェノサイドは日本社会の「今ここにある危機」だ

「火事場泥棒が」SNSで飛び交うデマ 能登半島地震の被災者不安|【西日本新聞me】

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日本では大災害のたびに悪質なデマが繰り返されます。岸田首相は、今般の能登半島地震に関して「被害状況などについての悪質な虚偽情報の流布は決して許されるものではない」と述べましたが*1、問題なのは「被害状況などについての悪質な虚偽情報の流布」だけではありません。日本では大災害のたびに卑劣な民族差別煽動デマが繰り返されますが*2、今般の能登半島地震でも、過去同様に卑劣な民族差別煽動デマが繰り返されています。

地震発生直後からインターネット上では多くのSNSアカウントによって、関東大震災時のデマを模倣した「○○人が井戸に毒を入れた」というデマや、東日本大震災の時にも問題となった*3「外国人窃盗団が現地に向かっている」というデマがしきりに流されました。このような民族差別煽動デマは、「冗談」の一言で済まされるものでは決してありません。「○○人が井戸に毒を入れた」というデマについて、「井戸に毒を入れた」というのが現代ではありえない設定だからつまらない冗談に過ぎないと言う人もいるかもしれません。しかし、「○○人が井戸に毒を入れた」というデマは、特定の民族や国籍に属する人々を敵視して罪人扱いすることで民衆の憎悪を特定の民族や国籍に属する人々に向けさせるものであり、たとえ「井戸に毒を入れた」というのが現代ではありえない設定だとしても、それはヘイトクライム*4につながりかねない実に危険な民族差別煽動にほかなりません。また、「外国人窃盗団が現地に向かっている」というデマについては、東日本大震災の時にデマに煽られた右翼団体の構成員たちが中国人を見つけたら殺しても構わないと鉄パイプやスタンガンで武装して石巻に乗り込んだ*5ことに鑑みれば、関東大震災時のような民族虐殺を引き起こしかねない極めて危険な民族差別煽動です。

デマを流す連中やデマを拡散する連中にとっては「ほんの軽い冗談のつもり」なのかもしれません。しかし、ヘイトクライムやジェノサイド(民族大量虐殺)につながりかねない極めて危険な民族差別煽動が「ほんの軽い冗談のつもり」でまるで娯楽のように消費されるというのは、本当に恐ろしいことです。それはつまるところ、日本人の多くが「1923年関東大震災ジェノサイド」*6に真摯に向き合ってこなかったということなのでしょう。そして、日本人の多くが「1923関東大震災ジェノサイド」に真摯に向き合ってこなかったということは、日本人の多くが再び同じ過ちを繰り返しかねないということです。つまり、大災害時のジェノサイドは、決して遠い昔や海外の話ではなく、日本社会の「今ここにある危機」なのです。だから私は、たとえ誰かに「ネタなんだからマジになるなよ」と冷笑されようと、卑劣かつ危険な民族差別煽動デマを絶対に許しません。