原発事故汚染水の海洋放出は「『処理水』に反発する中国」が問題なのではない。

「処理水」放出に反発する中国、甘利明氏「あなたにだけは言われたくない」 : 読売新聞

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原発事故汚染水の海洋放出について日本では、日本政府が「処理水」と呼ぶ原発事故汚染水を「核汚染水」と呼んで原発事故汚染水の海洋放出に“反発”する中国に問題があるかのような論調がメディアを席巻しています*1。そして、そのような論調の報道に煽られて中国への憎悪をたぎらせる国民も少なからず見受けられます。しかし、原発事故汚染水の海洋放出について「『処理水』に反発する中国」に問題があるとするのは間違いです。

原発事故汚染水の海洋放出は「『処理水』に反発する中国」が問題なのではありません。東京電力（東電）は、これまでたびたび原発事故・トラブルや原発事故汚染水に関する情報の隠蔽や改ざんを繰り返してきました*2。また、2013年9月に開かれた東京五輪招致に向けた国際オリンピック委員会（IOC）総会で、当時首相だった故安倍晋三氏は原発事故汚染水の状況について「アンダーコントロール（制御されている）」と嘘をつきました*3。そして、日本政府と東電は、福島県漁連と「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束していたにもかかわらず、福島県漁連の反対*4を押し切って原発事故汚染水の海洋放出を決定しました*5。このような日本政府と東電の不誠実な態度や隠蔽体質を考えれば、国内外の多くの人が日本政府と東電に対して不信感を抱き、原発事故汚染水の海洋放出に反対するのは至極当然のことです。それにもかかわらず日本政府と東電は、国内外の多くの人が日本政府と東電に対して抱いている不信感を払拭する努力をするどころか、IAEA報告書*6を「錦の御旗」に原発事故汚染水の海洋放出に反対する国内外の多くの声（原発事故汚染水の海洋放出に反対しているのは決して中国だけではありません。*7）をないがしろにして原発事故汚染水の海洋放出を強行した、まさにこれこそが問題なのです。

福島産の水産物を食べて安全性のアピールにいそしむ岸田氏ですが*8、原発事故汚染水は、それこそ「直ちに健康への影響はない」ものです。つまり、原発事故汚染水の安全性は、海洋放出から1ヶ月やそこらで答えが出る*9問題ではなく、将来においても放射能汚染による健康被害が生じない保証はどこにもないのです*10（科学に「絶対」はありませんから、将来においても放射能汚染による健康被害が生じないかどうかは、それこそ「神のみぞ知る」でしょう。）。原発事故汚染水の海洋放出について「たとえ数十年の長期にわたろうとも処分が完了するまで政府として責任を持って取り組む」と威勢のいいことを言う岸田氏ですが*11、さすがにこの先数十年も岸田政権が続くことはないでしょうし、日本政府が日帝による侵略や植民地支配について今日まで責任を果たしていないことを考えると、もし将来において放射能汚染による健康被害が生じたとして、その時の政権が責任を持って被害救済に取り組むことは期待できないでしょう。原発事故汚染水の海洋放出は、「今さえよければ、自分さえよければ、それでいい」という問題ではありません。日本とその人民は、全人類とその未来に対して責任を負っているのです*12。つまり、原発事故汚染水の海洋放出の問題は、「『処理水』に反発する中国」の問題ではなく、日本とその人民自身の問題なのです。しかるに、問題の本質を見誤り、御用メディアが朝から晩まで垂れ流す「『処理水』に反発する中国」が問題であるかのような論調の報道に煽られて中国への憎悪をたぎらせるというのでは、それこそ本来であれば原発事故汚染水の海洋放出強行という日本政府と東電の暴挙に対して向けられるべき批判の矛先をそらしたい日本政府と東電の思う壺です。