葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

ロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻は、日本社会のロシア人差別を正当化する理由にはならない。

「ロシア人の宿泊拒否」滋賀の旅館、HPに 行政指導で受け入れ再開 | 毎日新聞

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ロシア人とベラルーシ人の宿泊を拒否することが許されないのは、単に旅館業法に違反するからだけではありません。旅館業法に違反するからだけではなく、ロシア人とベラルーシ人に対する差別であるから、ロシア人とベラルーシ人の宿泊を拒否することは許されないのです。

そして、旅館による「宿泊拒否宣言」が「ロシアとベラルーシの振る舞い」を糾弾するための手法として間違っているのは、単に「ロシアやベラルーシの皆さんに罪はなく」ロシアとベラルーシの政府に罪があるからではありません。すなわち、ロシアとベラルーシの政府の「罪」と関係なく、「宿泊拒否宣言」が日本社会の「悪」であるロシア人とベラルーシ人に対する差別であるから、ロシアとベラルーシの振る舞い」を糾弾するための手法として間違っているのです。

ロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻以降、日本では、ウクライナ情勢に乗じてロシアを悪魔視する風潮が高まっています*1。このような「ロシア悪魔視」が、ロシア人差別を許容する社会の「空気」を醸成し、ヘイトクライムを誘発する危険なものであることは、「朝鮮悪魔視」がこれまで数々のヘイトクライムを惹き起こしてきた*2ことに鑑みれば明らかです。

昨今の日本におけるロシア人差別や「ロシア悪魔視」の元凶をロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻だと考える日本人は、おそらく少なくないでしょう。しかし、昨今の日本におけるロシア人差別や「ロシア悪魔視」の元凶は、ロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻では決してなく、日本社会にはびこる排外主義と、日本人がかねてより抱いていたロシア蔑視観です。ロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻は、それらを刺激したに過ぎません。

もちろん、ロシア・プーチン政権のウクライナ侵攻は断じて許されないものですし、平和を希求する世界人民がそれを糾弾することは大切なことです。しかし、ウクライナ侵攻というロシア・プーチン政権の「悪」は、日本社会のレイシズムという他ならぬ日本社会の「悪」を正当化する理由には決してなりません。ウクライナ情勢に乗じたロシア人差別をなくすためには、日本人は、ウクライナ侵攻というロシア・プーチン政権の「悪」を糾弾しなければならないことを言い訳にせず、日本社会のレイシズムという他ならぬ日本社会の「悪」と真摯に向き合い、これを克服することが必要です。