日本人のレイシストによる民族差別について、日本人の中には、よく「日本人である前に、人として許されない」と言ったり「こんな日本人ばかりではない」と言ったりする人がいます。
もちろん、民族差別は「人として許されない」ものですし、日本人の皆が皆レイシストであるわけではないでしょう。しかし、だからといって、日本人のレイシストによる民族差別に「日本」は決して無関係ではありません。なぜなら、日本人のレイシストによる民族差別は、究極的には日本社会の差別構造が生み出すものだからです。つまり、ある一人の日本人による民族差別は、彼個人の問題にとどまるものではなく、日本社会の構造的な問題なのです。そして、日本社会のマジョリティである日本人による民族差別という日本社会の構造的な問題について、「日本人である前に、人として許されない」ことや「こんな日本人ばかりではない」ことは何の言い訳にもなりません。
「日本人である前に、人として許されない」と言ったり「こんな日本人ばかりではない」と言ったりする日本人は、やはり心のどこかで日本人のレイシストによる民族差別と「日本」を切り離したいと思っているのでしょう。しかし、そうやって日本人のレイシストによる民族差別を生み出す日本社会の差別構造から目を背けていては、いつまでたっても日本社会にはびこる民族差別をなくすことはできません。それとも、まさか日本社会のマジョリティとして、差別構造を温存したいと思っているのでしょうか。
民族差別をするレイシストを非難し、民族差別をやめさせるのは、もちろん大切なことです。しかし、レイシストによる民族差別を、決して彼個人の問題だけに矮小化してはなりません。つまり、日本社会にはびこる民族差別をなくすためには、民族差別をするレイシストを非難し、民族差別をやめさせるだけでなく、日本社会の差別構造を、マジョリティである日本人が自分たちの手でこわしていくことが必要なのです。日本社会の民族差別について、よく「日本人として恥ずかしい」と言う人がいますが、本当にそう思うのであれば、ただレイシストの破廉恥な愚行に眉をひそめるだけでなく、日本社会の差別構造をこわしていくことに努めるべきです。人は人が作ったものではありませんから、レイシストという人を変えることは、不可能ではないとしても、決して易しくありません。しかし、社会の差別構造は人が作ったものですから、それを人の手でこわしていくことは、人を変えることに比べれば決して難しくないはずです。
