葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

汚染水の海洋放出による漁業被害は、「風評被害」ではなく実害だ。

「処理水」海洋放出へ 風評被害の対策強化|日テレNEWS24

 

風評被害」というのは、日本政府と東京電力にとって実に便利な言葉です。なぜなら、汚染水の海洋放出による漁業被害に関して、汚染水の海洋放出による健康被害を憂慮する人たちを加害者に仕立て上げることで、政府と東電は加害責任を免れることができるのですから。

汚染水を「処理水」と言い換えたところで*1海洋放出する水が放射性物質に汚染されている事実は変わりません。それでも、政府と東電は「科学的には安全だ」と強弁するでしょう。しかし、経産省も認めているように*2、「ALPS処理水」には政府が安全だと主張する*3トリチウム以外の放射性物質が含まれています。それゆえ、政府と東電が「科学的には安全だ」と言ったところで、ストロンチウム90などによる健康被害への懸念は払拭されません*4。また、政府は五輪招致のプレゼンテーションで当時の首相が「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」と嘘をつき*5、東電も汚染水の海洋流出を隠蔽しました*6。こうしたことを考えると、政府と東電の「科学的には安全だ」という言葉を信じろというのは到底無理な話であり、世界の市民が汚染水の海洋放出による健康被害を憂慮するのももっともなことです*7。あたかも「『科学的には安全だ』という言葉を信じないのは反科学的な態度だ」とでも言いたげな日本政府ですが、政府と東電の「科学的には安全だ」という言葉に対する不信感を生み出しているのは、市民の無知や誤解などでは決してなく、適時かつ適切な情報公開をせず、十分な説明責任を果たさない政府と東電の不誠実で無責任な態度です。それでも「政府と東電の言うことを疑わずに信じろ」というのであれば、それは反科学的であるのみならず、反民主主義的であると言わざるを得ません。

このように、汚染水の海洋放出による健康被害の懸念を生じさせているのは、市民の反対の声を無視した政府の独断による汚染水の海洋放出の決定であり、隠蔽や責任逃れに腐心する政府と東電の態度です。それゆえ、汚染水の海洋放出による健康被害を憂慮する消費者が水産物を忌避することで漁業者や水産加工業者に損害が生じるとしても、それは「風評被害」ではなく、政府と東電が汚染水を海洋放出しなければ生じることがない、汚染水の海洋放出による実害です。つまり、汚染水の海洋放出による健康被害を憂慮する消費者が水産物を忌避することで漁業者や水産加工業者が蒙る損害の加害者は、水産物を忌避する消費者ではなく、汚染水を海洋放出する政府と東電なのです。

汚染水の海洋放出による漁業被害は、実体のない「風評被害」ではなく、汚染水の海洋放出によって引き起こされる実害です。これを防ぐには、日本政府が汚染水の海洋放出を断念するしかありません。そして、それは処分方法の代替案によって十分可能なことです*8。私は、今般の日本政府による汚染水の海洋放出の決定という暴挙に断固として反対します。