葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

「唯一の戦争被爆国」という「被爆ナショナリズム」は、日本人に日本の加害の歴史を忘れさせる。

核兵器によってもたらされた広島、長崎の惨禍は、決して繰り返してはなりません。我が国は、引き続き非核三原則を堅持しながら、唯一の戦争被爆として、「核兵器のない世界」の実現に向けた努力をたゆまず続けます。

現在、核軍縮を巡る国際社会の分断の深まりやロシアによる核の威嚇等により、その道のりは一層厳しいものになっています。しかし、このような状況だからこそ、「核兵器のない世界」の実現に向け、国際的な機運を今一度呼び戻すことが重要です。

 

首相あいさつ【全文】平和記念式典<2023年> | 中国新聞デジタル

日本共産党は、岸田政権を世論と運動で包囲し、解散・総選挙に追い込み、唯一の戦争被爆にふさわしい政治の実現に向けて尽力しています。

世界大会は秋にかけての国民的運動の発展にとっても、大きな力になることは間違いありません。世界の動きを体感し、情勢を打開する展望と勇気を得ることができるはずです。多くの参加者で成功することが期待されます。

 

主張/2023世界大会/反核平和の流れさらに大きく | しんぶん赤旗

核兵器禁止条約については昨年と同じ61%が「日本は参加するべきだ」とした。その理由は「唯一の戦争被爆だから」が最多の62%、「核兵器廃絶につながるから」29%、「核抑止力には効果がないから」6%だった。「参加するべきではない」と答えた37%が挙げた理由は「核兵器廃絶につながらない」が最多の49%、「米国の核抑止力は必要だから」34%、「日本も核兵器を持つべきだから」6%だった。

 

<社説>平和に関する世論調査 戦争を起こさない構想を - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト

日本人の多くが広島・長崎の原爆被害や核兵器について語るとき、枕詞のように多用されるのが「唯一の戦争被爆国」という言葉です。しかし、私はこの「唯一の戦争被爆国」という言葉に違和感を覚えます。

アメリカが投下した原爆によって被爆したのは、「国」という幻想の共同体ではなく、実存する(した)「人」です。そして、被爆した「人」の中には、日帝のアジア侵略や植民地支配がなければ原爆被害に遭わなかったであろう人たちもいる(いた)*1のであって、被爆したのは決して「日本人」だけではありません。「唯一の戦争被爆国」という言葉は、日本人にそうした人たちのことを忘れさせ、ひいては日帝のアジア侵略や植民地支配といった日本の加害の歴史を忘れさせてしまうのです。つまり、「唯一の戦争被爆国」の論理は、(「日本人」だけに限定されない)「人」ではなく「日本という国」を原爆被害者のポジションに置き「日本という国」の戦争被害を強調することで日本の加害の歴史を忘れさせる、いわば忘却のための「被爆ナショナリズム」なのです。

「唯一の戦争被爆国」という「被爆ナショナリズム」によって日本の加害の歴史を忘れた日本人は、「ヒロシマ」の悲劇を語り継ぐ一方で「軍都廣島」の栄光を誇ったり*2、あるいは「ナガサキ」から核兵器の廃絶と世界の恒久平和を訴える一方で「軍艦島」における朝鮮人・中国人強制労働の史実を否定したり*3します。もちろん、広島・長崎の原爆被害を記憶し、継承することは、世界の恒久平和を実現するために必要なことです。しかし、それを免罪符にして日本人の多くが日帝のアジア侵略や植民地支配といった日本の加害の歴史を忘れてしまうのならば、世界の恒久平和を実現することは決してできないでしょう。世界の恒久平和を実現するためには、世界の国々が核兵器使用という過ちを犯さないために広島・長崎の原爆被害を記憶し、継承するだけではなく、日本が侵略戦争や植民地支配といった過ちを再び犯さないために日帝のアジア侵略や植民地支配といった日本の加害の歴史を日本人が主体的に記憶し、継承することが必要不可欠なのです。そのためにも、日本人は「唯一の戦争被爆国」という忘却のための「被爆ナショナリズム」を克服しなければなりません。日本人に日本の加害の歴史を忘れさせる「被爆ナショナリズム」を超えたその先に、「平和都市ヒロシマナガサキ」が希求する真の世界恒久平和はあるのですから。

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