葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

「自衛隊は違憲だから憲法を変える」というのは筋違いである。

安倍氏「自衛隊は憲法違反に終止符を」 新潟で講演、改憲訴え | 毎日新聞

 

憲法第9条が「戦力」の保持を禁じているにもかかわらず日本軍「自衛隊」があることについて、日本軍「自衛隊」は「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であり、憲法に違反するものではない」とするのが、日本政府の見解です*1しかしながら、日本の軍事力が世界第5位(2021年現在)である*2ことや、戦争法*3の制定により日本がアメリカと一緒であれば「いつでもどこでも戦争できる国」になった*4ことなどに鑑みれば、もはや日本軍「自衛隊」は、憲法第9条が保持を禁じている「戦力」であると言わざるを得ないでしょう。どうやら、リベラル派の中には安倍氏が「改憲のために自衛隊違憲な存在に位置づけている」と考える人もいるようですが、安倍氏改憲のために自衛隊違憲な存在に位置づけなくても、日本軍「自衛隊」は違憲な存在なのです。

もっとも、だからといって「自衛隊違憲だから憲法を変える」というのは筋違いです。すなわち、憲法第98条が「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と規定していることに鑑みれば、違憲な日本軍「自衛隊」は存在が許されないはずです。つまり、日本軍「自衛隊」が違憲であれば、日本軍「自衛隊」を解体するのが筋だということです。しかるに、憲法第9条が保持を禁じている「戦力」である日本軍「自衛隊」を解体するのではなく、「戦力」の保持を禁じる憲法第9条のほうを変えるというのは、倒錯にほかなりません。

「日本軍『自衛隊』が違憲であれば、日本軍『自衛隊』を解体するのが筋である」と言うと、おそらくリアリスト気取りの改憲論者たちは「現実を見ていない」と冷笑するでしょう。しかし、「現実」云々を言うのであれば、むしろ改憲論者こそ、もはや日本軍「自衛隊」が「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織」ではなく憲法第9条が保持を禁じている「戦力」であるという現実をしっかりと見つめるべきです。そして、それは護憲論者についても同じことが言えます。「戦力」の保持を禁じる憲法第9条が存在するにもかかわらず、もはやれっきとした「戦力」である日本軍「自衛隊」が存在することに違和感を覚えていないような護憲論者が、残念ながら少なくないようです。誤解を恐れずに言えば、憲法第9条に関しては護憲論者である私は、安倍氏の稚拙な戯言よりも、むしろそのような護憲論者の態度にグロテスクな怖さを感じます。