ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である。ふるいヨーロッパのすべての強国は、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる、法皇とツァー、メッテルニヒとギゾー、フランス急進派とドイツ官憲。
「共産主義は民主主義と対立する」あるいは「共産主義は独裁のためのイデオロギーである」と思っている人は少なくないようです。
たしかに、「独裁国家」といわれる国の中には、共産主義を国是とする国もあります。しかし、それはそういった国の権力者が資本主義社会から共産主義社会へ移行する過渡期の政治形態であるプロレタリア独裁を都合よく歪曲して人民支配のために悪用しているのであって、共産主義が本来的に「独裁のためのイデオロギー」なのではありません。それに、表向きは「民主主義国家」を標榜している独裁国家もあることを考えると、独裁者に悪用される危険があるのは民主主義も同じです。
「共産主義は民主主義と対立する」というのは大きな誤解です。共産主義は、平たく言えば資本家による労働者の搾取を本質とする資本主義を否定するものであって、治者と被治者の同一性を本質とする民主主義を否定するものではありません。つまり、共産主義は民主主義と対立するものでは決してないのです。階級を廃絶して被支配階級の人民を解放することを志向する共産主義は、治者と被治者の同一性を本質とする民主主義と対立するどころか、むしろ親和的であるといえます。
幽霊の正体見たり枯れ尾花
反共主義者たちは、「共産主義は民主主義を破壊する恐ろしい幽霊である」と喧伝し、共産主義に対する人々の恐怖心を煽ります。しかし、「幽霊」を恐ろしいと思うのは、その正体がわからないからです。(共産主義は枯れたススキの穂のようなつまらないものではもちろんありませんが、)反共主義者たちが「民主主義を破壊する恐ろしい幽霊である」と騒ぎ立てる共産主義も、その正体がわかれば、少なくとも資本主義の下で搾取され虐げられている労働者人民たちは、共産主義を恐ろしいと思わなくなるはずです。
共産主義は、資本主義的搾取をはじめとするあらゆる形態の搾取から人間を解放する理論です。それゆえ、反共主義者たちが撒き散らす「反共デマ」に惑わされることなく、共産主義を正しく知ることは、資本主義の下で搾取され虐げられているわれわれ労働者人民にとって大切なことなのです。