葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

民主主義を歪める「自由民主主義」という反共ファシズム

甘利幹事長、衆院選争点 「自由民主主義か、共産主義が入ってくる政権か」 - 産経ニュース

 

ヨーロッパに幽霊が出る――共産主義という幽霊である。ふるいヨーロッパのすべての強国は、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる、法皇とツァー、メッテルニヒとギゾー、フランス急進派とドイツ官憲。

 

 

もしかすると、日本国民の多くは、「自由民主主義」というその字面から「戦後の日本は自由な民主主義の国なのだから、自民党政権が掲げる『自由民主主義』を選ぶのが当然だろう」と思うかもしれません。そして、そう思う人たちは、「自由民主主義」を掲げる自民党政権が喧伝する反共プロパガンダを真に受けて「共産主義は民主主義にとって恐ろしい敵だ」と思っていることでしょう。

しかし、そもそも共産主義が民主主義にとって「恐ろしい敵」だというのは全くの誤解です。なぜなら、共産主義は資本家による労働者の搾取を本質とする資本主義を否定するものであって、治者と被治者の自同性を本質とする民主主義を否定するものではないからです。むしろ、階級を廃絶して被支配階級の人民を解放することを志向する共産主義は、治者と被治者の自同性を本質とする民主主義と親和的であるといえます。

要するに、「共産主義は民主主義にとって恐ろしい敵だ」というのは率直に言ってデマであり、それは民主主義国家における主権者たる人民の認識を歪めてしまうものです。つまり、「自由民主主義」を掲げる自民党政権が喧伝する反共プロパガンダは、民主主義を守るどころか、むしろ民主主義を歪めてしまうものなのです。

共産主義との戦い」が人民を弾圧し社会を統制する口実とされてきたことは、近・現代の歴史が示すところです*1。そして、戦後のいわゆる「西側」のいくつかの国では、「共産主義との戦い」を口実とした人民弾圧あるいは社会統制が、「自由民主主義」の旗印のもとで行われてきました。こうしたことに鑑みると、デマで共産主義への恐怖心を煽ることで人民を「共産主義との戦い」に動員せんとする一方、「自由民主主義」という甘い響きの言葉で人民を酔わせて束ねんとする自民党政権のやり口は、まさにそれであるといえます。つまり、自民党政権が掲げる「自由民主主義」は、決して字義通りのものではなく、その実は反共ファシズムなのです。

“幽霊の正体見たり枯れ尾花”

(もちろん共産主義はつまらないものではありませんが、)共産主義の真の姿を知れば、それは決して恐ろしいものではないことが分かるはずです。もっとも、自民党政権の反共デマを鵜呑みにするのと同じく、「共産主義は決して恐ろしいものではない」という私の言葉を鵜呑みにするのも、それはそれで民主主義的な態度ではないでしょう。自民党政権が「恐ろしい怪物だ」と騒ぐ共産主義の正体を、主権者たる人民が自ら確かめ、正しく知ること、それこそが民主主義的な態度です。本稿が、そのための一助となれば幸いです。