葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

K-POPファンであることは、日本人が自国の「負の歴史」を忘れることの免罪符にはならない。

韓流ファンの日本人大学生たち 「ただ文化消費せず歴史と向き合って」 | 聯合ニュース

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日本のK-POPファンの中には、「韓国による反日行為のせいで、日本社会では日本人がK-POPファンであることを躊躇なく公言することができない」と言ったり「純粋にK-POPを楽しみたい日本のK-POPファンにとって、日韓の歴史対立はハッキリ言って迷惑だ」と言ったりする人が少なからずいます。

たしかに、日本人がK-POPファンであることを躊躇なく公言することができない「空気」が日本社会にはあるかもしれません。しかし、それは「韓国による反日行為」のせいではなく、日本社会にはびこる民族差別や排外主義のせいです。

そもそも、彼らの言う「韓国による反日行為」とはいったい何のことでしょうか。私は「反日」を「悪いこと」だと思っていませんが*1、それはさておき、もしそれが韓国の市民や政府による日本の歴史修正主義植民地主義に対する抗議のことならば、彼らは大きな勘違いをしています。日本人がK-POPを楽しむことは、もちろん悪いことではありません。しかし、K-POPファンであることは、決して日本人が自国の「負の歴史」を都合よく忘れることの免罪符にはなりません。

「純粋にK-POPを楽しみたい日本のK-POPファンにとって、日韓の歴史対立はハッキリ言って迷惑だ」というのも、実に当事者意識を欠いた無責任な言い草です。たしかに日本のマスメディアの多くが、日本軍性奴隷制問題(日本軍「慰安婦」問題)や日帝強制動員問題(徴用工問題)を「日韓の歴史対立」だと言います。しかし、日本軍性奴隷制問題や日帝強制動員問題は、日帝植民地支配下の人権侵害という人権問題であって、本来そこには「歴史対立」などないはずです(もし、そこに何らかの「対立」があるとすれば、それは「人権と反人権の対立」でしょう。)。そして、日帝植民地支配下の人権侵害という人権問題は、「純粋にK-POPを楽しみたい日本のK-POPファン」であっても、K-POPファンである前に一人の日本人である以上、決して他人事ではないはずです。

「純粋にK-POPを楽しみたい日本のK-POPファン」は、しばしば「政治と文化は別」*2だと言います。それは、一聴するとあたかも正論のように聞こえます。しかし、「純粋にK-POPを楽しむ」ことを日本人が自国の「負の歴史」を忘れるための免罪符にすることは、「政治と文化は別」であるどころか、むしろ「文化の政治利用」です。そもそも「純粋にK-POPを楽しむ」ことは、日本人が自国の「負の歴史」と誠実に向き合うことと相容れないものではありません。日本にも、日帝の植民地支配という自国の「負の歴史」と誠実に向き合いながら純粋にK-POPを楽しんでいるK-POPファンは少なからずいるはずです。

私自身がK-POPファンであり、日本人が韓国のポップカルチャーを消費することそれ自体を非難するつもりはないことは、先に述べたとおりです。私が問題にしているのは、日本人が韓国のポップカルチャー植民地主義的に消費することです。日本ではしばしば、マスメディアに煽られた*3K-POPファンが、「マリーモンド」を愛用するK-POPアーティスト*4を「反日」だとバッシングすることがあります。そういうことを平気でするK-POPファンは、アーティストを「日本のファンに癒しを与えてくれる従順なペット」かなにかと勘違いしているのでしょうが、そんな傲慢​極まりない勘違いを生み出すのも植民地主義的な文化消費です。日本のK-POPファンは、K-POPを純粋に愛するのであればこそ、K-POPファンであることを日帝の植民地支配という自国の「負の歴史」を忘れるための免罪符にせず、自国の「負の歴史」と真摯に向き合い、植民地主義を克服しなければなりません。