韓国第二の都市、釜山。日本人の多くが釜山に対して抱いているイメージといえば、やはり「港町」でしょう。おそらく、それはこの歌の影響によるところが大きいと思います。
私の祖父は、1928年に当時日帝の植民地支配下にあった港町・釜山から『釜山港へ帰れ』でも歌われている連絡船で帝国・日本へ渡りました。それゆえ、釜山は孫である私にとって特別な思い入れのある街でもあります。
釜山港は、まさに港町・釜山の「顔」ともいえる場所ですが、われわれ日本からの旅行者にとっては、アジアを代表する国際貿易港としての顔よりも、韓国の海の玄関口としての顔、そして韓国一の規模を誇る水産市場としての顔のほうがなじみ深いでしょう。
釜山の代名詞ともいえるチャガルチ市場*1には、私も釜山を訪れるたびに足を運んでいます。チャガルチ市場では、一年を通して釜山の新鮮な海の幸を楽しむことができますが、特におすすめなのは、旬のチョノフェ(コノシロの刺身)*2を堪能することができる秋です。
さて、初春に釜山を旅すると、私はよく冬栢島*3を訪れます。そう、『釜山港へ帰れ』でも歌われている「花咲く冬栢(椿)島(꽃 피는 동백섬)」です。白い灯台のある見晴台からの眺めは、ゆったりとした時間が流れる、釜山の原風景ともいえるであろう絶景です。
また、韓国を代表するビーチリゾートとして名高い海雲台ビーチの方向を眺めると、現代的なビル群が建ち並ぶ海雲台と原風景的な冬栢島のコントラストが実に印象的です。
釜山のビーチといえば、海雲台ビーチと並んで釜山を代表するビーチとして有名なのが、ドラマでもよく登場する広安里ビーチです。
広安里*4は、まさに私が思い描く理想の海辺の街であり、広安海辺路は、まさに私が思い描く理想の海岸通りです。
人生で一度くらいは、こんな素敵な海辺の街で暮らしてみたいです。
影島にあるヒンヨウル文化村も、私の大好きな海辺の町です。朝鮮戦争の避難民たちが暮らした場所*5であるヒンヨウル文化村は、2013年公開の映画『弁護人』*6の撮影ロケ地として話題を呼び、今ではギリシャのサントリーニ島を彷彿させるおしゃれな観光スポットとして注目を集めています。
私は初春の晴れた日にヒンヨウル文化村を訪れましたが、時間がゆっくりと流れるような穏やかな雰囲気に包まれた海辺の町では、なんだか夢の中にいるような気分になりました。もしかすると、あの日のことは夢だったのもしれません。
以上、私の大好きな港町・釜山の風景をいくつかご紹介しましたが、これらはあくまでもほんの一部です。今回ご紹介できなかった風景については、いずれまた別稿でご紹介できればと思います。
コロナ禍で旅行することもままならない昨今ですが、また釜山を旅することができる日を心待ちにしながら、本稿を閉じることにします。