葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

「ブルーインパルス問題」の本質

安倍首相「ブルーインパルス」の”感謝飛行”に拍手 医療従事者にもあたらめて感謝と敬意:中日スポーツ東京中日スポーツ https://www.chunichi.co.jp/article/64602

 

今回のブルーインパルスの編隊飛行に関しては、これを称賛する多くの声がある一方で、「新型コロナウイルスへの対応にあたる医療従事者らへの敬意と感謝を示すこととブルーインパルスの編隊飛行に、いったい何の関係があるのだろうか」と疑問を呈する声も決して少なくありません。たしかに、新型コロナウイルスへの対応にあたる医療従事者らへの敬意と感謝を示すこととブルーインパルスの編隊飛行に、いったい何の関係があるのか私もさっぱり分かりません。ただ、「新型コロナウイルスへの対応にあたる医療従事者らへの敬意と感謝を示すための飛行」という政府が主張する趣旨を額面通りに受け取るのは、いささかナイーブすぎるでしょう。

私が思うに、今回のブルーインパルスの編隊飛行は、政府の医療従事者らへの敬意と感謝を示すものなどではなく、国民の日本軍「自衛隊」への敬意を養うもの、つまり日本軍「自衛隊」を称揚するプロパガンダです。ブルーインパルスの編隊飛行を目撃した国民たちの「本物はやっぱりすごい!」や「かっこいい」といった歓声が、その証左です*1。また、今回のブルーインパルスの編隊飛行を歓迎する国民の中には、「新型コロナウイルス禍で暗い世相のなか、子供たちが『ブルーインパルス、かっこいい!』となればいいじゃないか」と言う人もいるようですが、しかし、もし子供たちがブルーインパルスの編隊飛行を見て「ブルーインパルス、かっこいい!」となったとすれば、それこそ安倍政権や日本軍「自衛隊」の「目論見通り」でしょう。

安倍政権の「目論見」は、日本軍「自衛隊」の称揚だけではありません。飛行を見た都内在住の内科医は、マスメディアの取材に対して「誰もが同じ空の下、同じもの(=ブルーインパルス)に目を向けることで、まとまりも出てくる」と語ったそうですが*2、まさにこの人民を「国民」としてひとつにまとめて束ねること、つまりファシズムこそが、安倍政権が今回のブルーインパルスの編隊飛行に込めた、もうひとつの意図です。もっとも、今回ブルーインパルスが飛んだのは都心の空だけですが、しかし「帝都」の空を飛ぶ日本軍「自衛隊」機を「帝都」の国民が見上げる姿がマスメディアによって全国に伝えられれば、必要にして十分でしょう。

さて、今回のブルーインパルスの編隊飛行を批判する国民の中には、「ブルーインパルスの政治利用はやめろ」と言う人も少なくないようです。たしかに、今回のブルーインパルスの編隊飛行は「ブルーインパルスの政治利用」ですが、しかし、「ブルーインパルスの政治利用はやめろ」という批判は失当です。もっとも、それは今回のブルーインパルスの編隊飛行が「医療従事者らへの敬意と感謝を示す」ものだからではありません。「ブルーインパルスの政治利用はやめろ」という批判が失当なのは、そもそもブルーインパルスが、日本軍自衛隊プロパガンダという政治利用するためのものだからです。つまり、本当に日本が軍国主義を克服したのであれば、日本軍自衛隊プロパガンダという政治利用するためのブルーインパルスなどというものはいらないはずです。もしかすると、「ブルーインパルスの政治利用はやめろ」と言う人は、ブルーインパルスの正しい利用方法として「軍隊の平和利用」というものがある(そして、そもそも自衛隊こそが、まさしく「軍隊の平和利用」である)と考えているのかもしれません。しかし、「軍隊の平和利用」などというのは欺瞞でしかありません。核と同様に、軍隊も到底「平和利用」できる代物ではないのです。