葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

「ムン・ヒサン案」の問題点

「強制動員・慰安婦基金」ムン・ヒサン案…「日本政府に免責」批判の声も : 政治•社会 : hankyoreh japan

 

ムン・ヒサン韓国国会議長が日帝強制動員被害者への賠償問題の解決策として示した私案は、たしかに被害者に対する金銭的な補償だけを考えれば、「現実的な解決策」といえるかもしれません。しかし、それは決して根本的な解決策ではありません。

思うに、「ムン・ヒサン案」は、日本軍性奴隷制問題での「アジア女性基金」や「慰安婦問題日韓合意」と同様、日帝植民地支配とその下での不法行為の責任をうやむやにするものであり、また、被害者の間に分断と対立を招きかねないものです。特に懸念すべきは、被害者の間に分断と対立を招きかねない点です。それというのも、「アジア女性基金」や「慰安婦問題日韓合意」の時と同様に、日本の政府や保守派は被害者間の分断と対立を狡猾に利用するでしょうから。

日本軍性奴隷制問題では、日本の保守派のみならずリベラル派の中にも、一部の被害者が「見舞金」を受け取ったことを理由に、あたかも被害者や支援者が日本政府の法的責任をすることが問題の解決を困難ならしめているかのように言う人がいます。たしかに、「見舞金」を受け取った被害者の意思は尊重されるべきです。しかし、日本軍性奴隷制問題は人権問題であって、それは多数決で決めてよいことではありません。つまり、一部の被害者が「見舞金」を受け取ったからといって、日本政府の法的責任を追及する被害者の意思が無視されるいわれはないのです。そして、このことは日帝強制動員問題(徴用工問題)でも同様です。

日帝強制動員被害者の名誉と尊厳の回復は、決して金銭的な補償だけでなし得るものではありません。そうである以上、日帝強制動員問題を根本的に解決するには、韓国大法院が下した判決を加害者である日本企業が誠実に履行し、日本政府は日帝植民地支配の不法性を認めて日本企業による判決の誠実な履行を妨げないこと、それしかありません。残念ながら、「ムン・ヒサン案」は、日帝植民地支配とその下での不法行為の責任をうやむやにし、日帝強制動員被害者に沈黙を強いる「日韓65年体制」という新植民地主義的体制を糊塗するだけの“悪手”であると言わざるを得ないでしょう。

もっとも、だからといって日本のマスメディアや国民がムン・ヒサン議長を非難するのはお門違いです。日帝強制動員問題がいつまでも解決しないのは、加害者である日本企業が韓国大法院の判決を誠実に履行せず、日本政府が日帝植民地支配の正当化に腐心して日本企業による判決の誠実な履行を妨げるからであり、日本側が納得する解決策を韓国側が提案しないからではありません。繰り返しになりますが、日帝強制動員問題を根本的に解決するには、韓国大法院が下した判決を加害者である日本企業が誠実に履行し、日本政府は日帝植民地支配の不法性を認めて日本企業による判決の誠実な履行を妨げないこと、それしかありません。