葦辺の車家ブログ

自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない車家(くるまや)ゆきとが感じたこと・考えたことをそこはかとなく書き綴ります。

日本軍性奴隷問題の真の解決のために、必要なこと。

韓国大統領、矛盾を露呈 慰安婦合意新方針、国内でも批判:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/DA3S13307453.html

 

どうして、日本政府もマスメディアも、そして国民も、韓国政府が「日韓“慰安婦”合意」の不当性を主張する一方で合意の破棄・再交渉を要求しない真意を考えようとせず、表面だけを捉えて韓国を蔑んだり憎んだりするのでしょうか。韓国・文政権は、日本という国を尊重しているからこそ、「日韓“慰安婦”合意」の不当性を主張する一方で日本政府に対して合意の破棄・再交渉を要求しないのです。すなわち、もし日本が「人間の尊厳」という価値観を共有することのできる国であるならば、他律的にではなく自律的に合意の妥当性を再考することができるであろうことを期待して、合意の破棄・再交渉を要求しないことにした、ということです。これは、「日本側が自ら真実を認め、被害者の名誉と尊厳の回復、心の傷の治癒に向けた努力を続けることを求める」という康京和外交部長官の言葉*1からも、うかがい知ることができるでしょう。

しかし、残念ながら日本は、「人間の尊厳」という価値観を共有することのできない国だったようです。なぜなら、日本政府は「被害者の名誉と尊厳の回復、心の傷の治癒に向けた努力を続けること」さえできないと言うのですから*2。韓国政府が日本政府に対して求めているのは、あくまでも「被害者の名誉と尊厳の回復のための自発的な努力」です。しかるに、それさえも日本政府は受け入れられないというのは、結局のところ「日韓“慰安婦”合意」での安倍首相の「心からのおわびと反省」も、所詮は口先だけにすぎないということです。そうだとすれば、そのような欺瞞に満ちた「合意」など、そもそも守るに値しないでしょう。

「日韓“慰安婦”合意」の不当性もさることながら、日本政府に「被害者の名誉と尊厳の回復のための自発的な努力」を求める韓国政府に対する日本政府の態度も、傲岸不遜極まりないものです*3。韓国・文政権は、日本を対等な主権国家と認識しているからこそ、日本の立場を尊重して「被害者の名誉と尊厳の回復のための自発的な努力」を日本に求めているのです。それに比べて日本政府は、「韓国が日本に要求するなど、絶対に許さない」といった感じで韓国を見下しているように思えてなりません。日本政府は、未だに韓国を属国だと勘違いしているのでしょうか。露呈したのは文在寅大統領の“矛盾”などではなく、未だに植民地主義を克服できない日本政府の体たらくです。

結局のところ、日本軍性奴隷問題を真に解決するのに必要なのは、「国家間の合意だから」と形だけにこだわって欺瞞に満ちた合意を維持することではなく、文在寅大統領の言葉の通り*4「日本が真実を認め、被害者に真の謝罪をし、それを教訓に国際社会と努力する」ことです。そして、「真の謝罪」とは、口先だけ「おわびと反省」をするのではなく、今後も日本政府が、かつての日本による戦時性犯罪の被害を隠蔽あるいは矮小化するなどといった、謝罪と矛盾した態度をとらないことです。

日本軍性奴隷問題は、日本国民一人ひとりにとっても、決して「無関係なこと」ではありません。なぜなら、日本軍性奴隷問題では、日本国民一人ひとりに対しても「人間の尊厳」という価値観を共有することができるかどうかが問われているのですから。